平成30年、「難民申請」を行った外国人の方は10,493人 いました。そのうち難民と認定されたのは38人、申請を取り下げた人等が2,923人となっています。
私が勤めていた専門学校でも就職先が決まらなかった留学生が「難民申請」をしていたようですが、難民認定の運用が変わり、難民申請中に働くことができなくなってからそのような留学生もいなくなったようです。

「難民申請」で働けなくなった

平成30年1月から難民申請の運用が変わりました。これまでは難民申請があれば6カ月の「特定活動(難民申請)」の在留資格・ビザが与えられ、就労が認められていました。難民申請の認定には2年から3年かかりますので、日本で最後にお金を稼いでやるか、といった元留学生やビザが不許可になった外国人の最後の在留資格・ビザとなっていました。

この現状を重く見た法務省は難民申請者をA・B・Dに振り分け、D案件に振り分けられた難民申請者には就労不可の3か月の「特定活動」を与えることにしました。

難民申請の流れは以下の通りです。
難民申請→振り分け期間に与えらえる2カ月の「特定活動」→A・B・Dに振り分け。

A→判明後、速やかに「特定活動(就労可)」を与える
B→在留制限
D1→就労制限:「特定活動(3カ月、就労不可)」
D2→ 申請等から6カ月以内:「特定活動(3カ月、就労不可)」を2回許可。申請等から6月経過後:「特定活動(6カ月、就労可)」 が与えらえる

Dに振り分けられるのは
①本来の在留資格に該当する活動を行わなくなった後に難民申請を行った人
②出国準備期間中に難民申請を行った人

①は元留学生や元技能実習生があてはまり、②は在留資格・ビザが不許可になった人が当てはまります。「難民申請」を最後の就労ビザと考えている方はDに振り分けられ、日本で働くことができなくなりました。

「難民申請」をするには

平成30年、日本で「難民申請」の認定を受けた方は38人、約15,000人の処理数の0.2%しか認定されていません。難民認定には高すぎるハードルがあります。

1.申請手続き
申請の窓口は最寄りの出入国管理局・難民調査部門です。
難民認定申請書は法務省のHPからダウンロードできます。ほかの在留資格・ビザと同じように難民であることの立証は申請者がしなければいけません。

2.仮滞在の許可
申請中は仮滞在の許可書が発行されます。仮滞在許可の判断は、難民認定申請者から提出のあった難民認定申請書等の書類により行いますので、仮滞在許可のための申請は必要ありません。
仮滞在の許可を受けた場合、住居や行動範囲の制限を受けるほか、就労も認められません。また難民調査官から出頭の要請があった場合には指定された日時、場所に出頭して難民認定手続へ協力する義務が課されるなど、いろいろな条件があります。条件に違反したときは仮滞在許可が取り消されます。
仮滞在は滞在期間の10日前に更新してください。

3.難民認定
もし難民に認定されなかった場合、在留を特別に許可する在留特別許可の申請、または審査請求ができます。

難民申請中にほかの在留資格・ビザの申請ができるのか

日本で難民の認定を受けるには高いハードルをクリアしなければならず、そもそも申請する人たちが最後の在留資格・ビザだと考えてしまっています。
そのため簡単に「難民申請」をしてしまった外国人の方が難民申請中にほかの在留資格・ビザに変更できるのでしょうか。

「技術・人文知識・国際業務」に変更
難民申請中に就職先が見つかったケースですが、在留資格・ビザの変更は大変難しいと考えます。
「難民申請」が不許可になりそうだから「技術・人文知識・国際業務」に変更するのではないのか。出入国管理局に就労目的のための権利の濫用ではないことを説明しなければいけません。
また一度就労ビザが不許可になった方は学歴要件などが足りず、最初から「技術・人文知識・国際業務」に該当しないケースがあります。(そのために「難民申請」をしてしまったと考えられます)

「日本人の配偶者等」・「家族滞在」に変更
難民申請中に結婚をされるケースです。「難民申請」が初めてなのか、何度も申請をしているのかによって許可・不許可が違います。
何度も「難民申請」をしている場合、権利の濫用だと判断されるでしょう。しかし初めての「難民申請」でしたら許可が取れるかもしれません。
大切なことは結婚の真摯な意思と経済の安定性です。通常の「日本人の配偶者等」や「家族滞在」以上にていねいな立証が必要となります。
万が一不許可になってしまった場合は、一度帰国をし、在留資格認定証明書で新しい在留資格・ビザを取ってから日本に来る方法も考えられます。国によってはもう一度日本に来ることが難しく、また好きな人と離れ離れになりたくないお気持ちもわかりますが、ひとつの方法としてお考えください。

まとめ

日本で働くための最後の在留資格・ビザだと考えて「難民申請」をする外国人の方がいるのも事実です。しかし難民の認定は難しく、また難民申請中にほかの在留資格・ビザへ変更することも難しくなっています。
「難民申請」をする前にどのような在留資格・ビザだったら日本で働くことができるのか、好きな人と日本で生活できるのか、日本に来る前に知っていなければいけません。
在留資格・ビザでわからないことがありましたらJOY行政書士事務所までお問い合わせください。