ホテル・旅館で働くネパール人従業員の在留期間更新許可申請で無事に許可が取れました。ひとつは転職ありの「技術・人文知識・国際業務」の更新、もうひとつは同じ職場での更新申請でしたが、ふたつの申請で給料について追加の説明を求められました。

在留資格の申請では、今後さらに給料の説明が大切になっていくようです。

就労ビザの給料の要件

「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザの許可要件には、”日本人従業員と同等以上の給与”としか書かれていません。地域、職種によって給料は違いますので簡単に○○万円以上と書けない事情もわかりますが、”日本人従業員””同等以上”を勘違いすると不許可になります。

日本人従業員とは

「技術・人文知識・国際業務」の場合、外国人従業員は母国の大卒、または日本の専門学校か大学を卒業していることかと思います。(でないと学歴要件を満たさずに許可が取れません)

そのため、給料面で比べる”日本人従業員”は同じ学歴(専門卒か大卒)でなければいけません。高校を卒業した日本人従業員と同じ給料では”日本人従業員と同等以上”とは言えません。

ホテル・旅館など一部の企業では大卒の従業員がいないために、大卒の外国人留学生にも高卒と同じ給料を支給しようとしますが、(そもそも大卒の従業員を想定していないため大卒の初任給が就業規則に書かれていない)、これでは不許可になってしまいます。

「技術・人文知識・国際業務」の要件は専門性がある業務内容です。言葉は悪いですが、外国人従業員は高卒の従業員と同じ業務はできません。出入国在留管理局は提出していない企業の求人票を探し出し、求人票の応募要件に”学歴不問”と書かれているだけで不許可にするケースもあります。高卒の従業員と同じ給料=専門性のない業務内容だと審査されます。

もし大卒の給料の規定がない企業が外国人を採用するときは、大卒の給料規定を作成してから採用をして、出入国在留管理局に在留資格の申請をしなくてはいけません。

同等以上の給料と同一賃金同一労働

”同等以上”ですので、日本人従業員よりも給料が高くても問題はありません。母国語と日本語など、高い語学能力を持つ外国人従業員でしたら日本人従業員よりも給料を高く設定しても大丈夫でしょう。

しかし、許可を取るために同じ業務内容=労働をしている日本人従業員、外国人従業員よりも給料を高くすると、給料が低いほかの外国人従業員が在留資格の申請をするときに不許可になるかもしれません。右の外国人従業員の給料を上げて在留資格の許可を取ると、左の外国人従業員の給料も上げなければいけません。

近年、出入国在留管理局は外国人従業員を雇用する企業が労働法を遵守しているか、を厳しく審査します。その中で「同一賃金同一労働」は大切なポイントになります。

今回のケースでも、すでに許可を取っていた外国人従業員よりも低い給料で申請をしていました。先輩従業員はチーフ手当があるため給料が高いのは当たり前だったのですが、チーフとしての特別な業務が認められず、申請人も同じ業務を行うため給料を同一にするように出入国在留管理局から指摘が入りました。「同一賃金同一労働」です。一度不許可になりましたが、申請人にもチーフ手当をつけることで最終的に許可が取れました。

給料の考え方

出入国在留管理局は給料(報酬)を以下のように考えています。

  1. 報酬の月額は、賞与を含めた1年間従事した場合に受ける報酬の総額を12分の1で計算する
  2. 報酬とは、「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」をいい、通勤手当、扶養手当、住宅手当などの実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものを除く)は含まない

雇用契約書には時給、日給、月給で給料が記載されていると思いますが、在留資格の申請では賞与(ボーナス)を含めた金額=年収を12分の1で割った給料を記載します。賞与を入れて計算をしますので、雇用契約書の給料よりも多くなるかと思います。

”役務の給付の対価として与えられる反対給付”とは難しい言葉ですが、簡単にいえば仕事をすることでもらえるお金のことです。通勤手当や扶養手当などは、その企業に所属していることでもらえるお金ですので、仕事をしてもらえる反対給付ではありません。ただし、税金を取られる手当は給料として考えます。

反対給付とは「基本給+(考えられる)残業代+課税対象の手当」です。在留資格の申請のときは、単純に月給を記載しないで、同一労働をしているほかの従業員の年収を参考に記載してください。

今回のケースでは月給のみを記載したために齟齬が生じ、出入国在留管理局から追加の説明を求められました。申請書の給料を残業代なども含めた金額に直すことで無事に許可が取れました。

まとめ

”日本人従業員と同等以上の給与”の一文の中にも、気を付けなければいけないポイントがたくさんあります。単純に申請人である外国人従業員の給料を高くすると、ほかの外国人従業員が不許可になります。外国人従業員を雇用することがコストになるだけです。

外国人従業員を雇用するときは、最初のひとりが肝心です。専門家にご相談の上、外国人従業員の雇用をお考えください。