政府は看護師を目指して来日した外国人について、新在留資格「特定技能1号」の介護業への移行を認める方向で検討に入った。複数の政府関係者が5日、明らかにした。介護業での深刻な人手不足解消に向け、外国人材の弾力的活用を図る。(時事ドットコムより)

8月6日に上記のニュースがありました。厚労省のHP「インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて」には、”これら3国からの受入れは、看護・介護分野の労働力不足への対応として行うものではなく、相手国からの強い要望に基づき交渉した結果、経済活動の連携の強化の観点から実施するものです。”と書かれていますが、建前を取り繕う余裕がないほど介護現場の人材不足は深刻なのでしょう。

現在、外国人の方たちが介護現場で働くにはいくつかの方法があります。一度整理していきましょう。

在留資格「介護」

専門的・技術的分野の外国人の受け入れのための在留資格です。
国の認定を受けた養成施設で2年以上介護について勉強をします。学校に通っている間は「留学」の在留資格で日本に滞在します。
介護福祉士国家試験に合格後、介護福祉士登録をしてから介護福祉士として介護施設で働きます。

技能実習

もとは本国での技能移転を目的とした在留資格です。

実習実施者(介護施設など)で最大5年間の実習を行います。実習の段階で技能評価試験を受けないといけません。試験は入国1年後、3年後、5年後に行われます。在留資格「技能実習」で日本に滞在できるのは最大5年ですので、5年を過ぎたら本国に帰国し、本国で技能を活用しなければいけません。

しかし、3年目、または5年目の技能評価試験に合格した技能実習生は介護福祉士国家試験の受験資格が与えられます。介護福祉士国家試験に合格すれば在留資格「介護」で日本で働くことができます。

また後述する「特定技能1号(介護)」の技能測定試験、日本語能力試験が免除され、「特定技能」の在留資格で日本の介護現場で働くことができます。

特定技能1号(介護)

人材不足に対応するため、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れるための在留資格です。

技能測定試験、日本語能力試験に合格すれば通算5年間の「特定技能1号」の在留資格が与えられます。ほかの特定技能の場合、5年経過したら2号に在留資格を変更するか、帰国をしなければいけません。しかし「介護」の場合は5年経過すると介護福祉士国家試験が受験できるようになります。試験に合格すると介護福祉士登録を経て在留資格「介護」で日本で働くことができます。

EPA

EPAとは、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国と結んでいる経済連携協定のことです。看護師候補者、介護福祉士候補者が日本で働いています。

介護福祉士候補者は、介護福祉士養成施設で2年以上、または介護施設などで就労・研修を3年以上行い介護福祉士国家試験の合格を目指します。5年以内に合格できない場合は帰国をしなければいけません。

看護師候補者の場合は4年以内に看護師国家試験に合格しなければ帰国となります。

国家試験は日本人と同様日本語の試験のみです。働きながら日本語を覚え・専門用語を覚え、外国人の方は試験に合格しなければいけません。労働力だけ搾取し4年後本国に返す、と問題になっている制度ですが、政府はこのEPAで来日している候補者も「特定技能1号(介護)」に変更できるようにします。
それが上記のニュースです。

「特定技能1号」の取得には原則、技能と日本語の試験に合格する必要がありますが、介護福祉士候補者については
(1)4年以上の就労経験
(2)国家試験での一定以上の得点
以上の要件を満たせば試験が免除となります。

看護師候補者からの移行についても、一定の条件下で試験が免除されるようです。

まとめ

介護現場の人手不足を解消するため、在留資格「介護」の間口が広がっています。たくさんの外国人の方が日本の介護現場で働くようになるでしょう。

しかし、外国人留学生の中には「介護」の在留資格が簡単に取れる、といった理由でビジネスの専門学校から介護の専門学校に転校をする留学生がいます。人手不足だからといって外国人の方を雇用すると、すぐに辞めてしまうかもしれません。
外国人の方がすぐに辞めてしまう介護施設は出入国管理局から管理不足としてにらまれ、新しい人材確保が難しくなります。

間口は広がりますが、慎重な採用が求められます。