外国人留学生にとって日本で働く最大の壁は「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザの許可を取ることです。多くの留学生が「在留資格の該当性」=留学生が日本でする活動が在留資格に当てはまるか、「学習内容と業務内容の関連性」=大学などで勉強をした専門的な知識をいかせる業務の証明ができなくて帰国します。(オーバーワークの留学生もいますが)。

外国人留学生は現在、日本に30万人いますが日本に残って働く留学生は30%しかいません。日本政府はこの割合を50%まで引き上げようとしています。

ハードルの高い「技術・人文知識・国際業務」に代わって外国人留学生などが日本で働くためにできた新しい在留資格が「特定技能」です。

「特定技能」の役割

私は「特定技能」の役割は2つあると考えています。

  1. 技能実習生の労働期間の延長
  2. 外国人留学生のアルバイトの延長

要するに、現場作業労働者の獲得です。

「特定技能」は今までの就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」では出入国管理局に専門性が指摘され許可が下りなかった”現場作業”の業務も認められます。

2017年、日本で働く外国人は127万人います。127万人の23%が資格外活動許可を得た留学生です。
留学生は週28時間(長期休暇期間週40時間)しか働くことができません。アルバイトをするには資格外活動の許可が必要です。

不思議な話です。在留資格の”外”で働く留学生も『日本で働く外国人』=労働力とカウントされています。

現在の日本は外国人留学生の労働力がないと成り立ちません。留学生の労働力を確保するためにも「特定技能」が成立したと考えられます。

外国人留学生が特定活動を取るためにすべきこと

進路指導室の担当者として一番困った留学生はアルバイト先で就職する学生でした。アルバイト先のコンビニ、飲食店で就職した留学生の多くは就労ビザの許可が取れません。(条件によっては就労ビザの許可が取れますが)。

しかし今後は 「特定技能」の在留資格(ビザ)の要件を満たせばアルバイト先で就職ができます。

外国人留学生の要件は2つだけです。

  • 日本語能力検定N4相当の日本語レベル
  • 各業種ごとの技能測定試験に合格する

すでに介護・外食・宿泊は技能測定試験が始まっています。外食はアルバイト先が集団で応募したため1日で定員に達したようです。

要件は簡単ですが、技能測定試験が簡単だとは限りません。
一般社団法人日本フードサービス協会が外食業技能測定試験の受験に必要な学習用テキストをアップしていますが、内容を確認すると無勉強ではアルバイト経験者でも不合格になると思われます。合格率を65%前後にしたいといった思惑もあるようです。日本人アルバイトでも簡単には合格できないでしょう。

「特定技能」で働きたい外国人留学生は、学校の勉強とは別に各技能測定試験の勉強をしないといけません。

「特定技能」と「留学」

「特定技能」は「留学」の天敵だ、と説明する人もいます。私が働いていた専門学校でも「特定技能」の在留資格を詳細に検討していました。

日本で働く外国人127万人の内23%が資格外活動許可を得た留学生です。日本政府も外国人留学生を労働力と見ています。はっきり言ってしまえば、外国人留学生の一部も日本で働くために留学ビザを取得して来日しています。
入学金・学費で100万円以上払っても、日本でアルバイトをすればすぐにペイできます。(その結果オーバーワークで帰国することになります)。

「特定技能」ができたので外国人留学生は100万円の大金を出してわざわざ日本の学校に通う必要性がなくなります。留学ビザで来日する外国人が減ることが予想されます。

「特定技能」の学校の役割

でも、本当に留学ビザは減っていくのでしょうか。私はそうは思いません。

外食業技能測定試験の学習テキストはとても難しい内容です。今後はベトナムなど協定を結んでいる11か国でも試験を行うようです。それに伴ってベトナムなどの国でも「特定技能」に特化した学校が設立されるかもしれません。

しかし、日本でアルバイト経験がない、来日経験のない外国人が技能測定試験に合格できるか一考の余地があります。外国で技能測定試験を教えられる人材がいるのかも疑問です。

日本語学校や専門学校は技能測定試験に特化したカリキュラムで「特定技能」と共存していけます。

たとえば車の整備などを勉強する自動車大学です。ネパールは将来車が増えていくと考え、車の整備を勉強したいと考えるネパール人留学生が多く進学します。「特定技能」自動車整備業は、自動車整備技能検定試験3級及び自動車整備特定技能評価試験(仮称)の合格が要件になります。自動車整備技能検定試験3級のレベルに達していない留学生にも自動車整備特定技能評価試験(仮称)を受けさせるカリキュラムが考えられます。

私が勤めていた専門学校のように日本語通訳とビジネスを勉強している留学生が日本にはたくさんいます。
そのような学校は日本語能力検定N2を基準に考えています。そのためN3レベルの学生にもN2を受験させるため、最終的に資格のない留学生を輩出しています。今後は「特定技能」の要件を満たすためにも、まずはN3、N4を取らせる指導方法が考えられます。

合わせて「特定技能」の宿泊業・外食業の技能測定試験に適したカリキュラム、進学コースを用意できるかもしれません。

技能測定試験はいくつも受験できます。試験にたくさん合格することで業種を超えた転職が可能になります。学生の個性にあった「特定技能」を指導できたら、学生の将来が広がります。