大学の「研究生」として在籍していた外国人留学生が失踪、行方不明になっているとニュースで取り上げられました。一部大学の問題として取り上げられていましたが、外国人留学生を抱えるすべての大学・専門学校に潜在する問題ではないしょうか。
「特定技能」を踏まえ、今一度外国人留学生の進路先を見直すときに来ています。

なぜ外国人留学生が「研究生」になってしまうのか

外国人留学生が「研究生」になるパターンは2通り考えられます。

  1. 進学できなかった
  2. 就職できなかった

1の進学できなかった外国人留学生は専門学校、大学を受験したが不合格になってしまったケースです。
今までは日本語学校を卒業しただけでは日本で働くことができなかったため、専門学校などの進学を希望して「研究生」にいったん腰を落ち着けます。
今後は日本語学校から「特定技能」に変更して働くことができるようになったため、このような「研究生」は減っていくかもしれません。

2の就職できなかった外国人留学生は就職先が決まらなかったケースと就労ビザが不許可になったケースが考えられます。どちらにしても日本で働きたいのに働くことができない留学生です。日本で働く意欲が高い留学生が日本に残るために「研究生」に進学(?)します。
この場合、留学ビザの在留期間が残っているため「研究生」になっても在留資格を更新する必要がありません。在留資格・ビザの心配はいりません。

就職できなかった「研究生」はすでに専門卒・大卒の学歴を持っています。そもそも「研究生」の次の進学先である大学・大学院に進学する意思がないため就職が決まったら「研究生」をあっさりと辞めます。
また専門卒・大卒の「研究生」が専門学校・大学に進学を希望する「研究生」と同じ授業を受けているのだとしたら、授業がつまらなくて学校を辞めてしまうのは仕方がないことかもしれません。

2018年、外国人留学生の就職率は30%しかありません。就職できなかった外国人留学生の内の何人が「研究生」となって日本に残っているのでしょうか。

外国人留学生を「研究生」にしないために

外国人留学生を「研究生」にしないために、最も必要なことは外国人留学生の就職率を上げることです。政府も外国人留学生の就職率を30%から50%に引き上げるよう政策を出しています。

新しい在留資格もできました。サービス業のための「特定活動」や「特定技能」です。
外国人留学生は日本語の勉強をがんばって日本語能力試験N1に合格すれば、飲食・小売などのサービス業で就労ビザが取れるようになりました。
技能測定試験に合格し、「特定技能」で働くこともできます。

特に日本語学校や専門学校では「特定技能」に対応したカリキュラムを用意し、技能測定試験に合格できるように留学生をサポートするかもしれません。「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」がバッティングする業務内容が出てきます。今までの卒業生と同じような就職先、業務内容で「技術・人文知識・国際業務」の許可が下りるのかわかりません。対策のないままでは就労ビザが不許可になり、卒業後「研究生」になってしまう外国人留学生が増えていくでしょう。

もともと就職ができなかった外国人留学生には「継続就職活動のための特定活動」が用意されています。この在留資格を取得すれば6カ月間は日本に残って就職活動ができます。6カ月間で就職が決まらなかったときはもう6カ月間更新ができます。
外国人留学生は「研究生」にならなくても日本で引き続き就職活動ができます。しかし「特定活動」も在留資格のため不許可になる場合があります。不許可を心配し、外国人留学生もお金を払って「研究生」になるのです。しかしこれではお金を出して在留資格を買っているのと変わりませんし、もしかしたら学費を稼ぐために外国人留学生に推薦状を発行しないでむりやり「研究生」にしている学校があるのかもしれません。

今後は外国人留学生の管理がより一層厳しく審査されます。「研究生」はその最たる審査ポイントです。学校は外国人留学生を「研究生」にせず、「継続就職活動のための特定活動」など的確な在留資格の許可が取れるようにサポートをする必要があります。

「在籍管理非適正大学」、「慎重審査対象校」にならないために

新制度では ”各大学が毎月、所在不明や退学、除籍になった留学生数を文科省に報告する。指導後も改善しない場合、文科省は「在籍管理非適正大学」として法務省に通告する。法務省は改善するまでの間、新規に入る学生への留学の在留資格の付与を停止する。”
また ”不法残留者が多い大学を「慎重審査対象校」として在留資格審査を厳しくする従来の制度も見直し、3年連続で対象校になると同様に資格付与を停止する。ほかに大学名を公表し、私学助成金の減額や不交付などの制裁も科す。” といった報道があります。

外国人留学生にしっかりとした進路、在留資格を提示できない学校は外国人留学生の受け入れができなくなり、学校の存続が危ぶまれます。

JOY行政書士事務所では専門学校で進路指導を担当した行政書士が対応をいたします。外国人留学生の就職先、就労ビザ、「継続就職活動のための特定活動」などに対応しています。お問い合わせフォームよりお問い合わせをお待ちしています。