近年、外国籍のトラックメイカーや作曲家の方が、在留資格「芸術」を取得して日本で活躍されるケースが増えています。
普段は自宅やスタジオで楽曲制作を行うのがメインの活動ですが、ご自身のファンが増えてくると、こんな相談をいただくことがあります。
「今度、クラブイベントでDJをしてほしいと依頼されました。出演しても大丈夫でしょうか?」 「出演料として少額の謝礼が出るのですが、在留資格の問題はありませんか?」
実は、この「イベント出演」は、入管法上とても判断が難しいグレーゾーンを含んでいます。
「これくらいの金額なら大丈夫だろう」と安易に受けてしまうと、在留期間の更新時に「資格外活動違反」とみなされ、最悪の場合、不許可になってしまうリスクもあります。
今回は、実際に当事務所でサポートした事例をもとに、作曲家(芸術ビザ)がイベント出演をする際の注意点について解説します。
「芸術」と「興行」の大きな違い
まず、日本の在留資格にはアーティストに関連する資格として大きく分けて以下の2つがあります。
- 「芸術」:作曲家、画家、著述家、写真家など、創作活動を行って収入を得る人のための活動。
- 「興行」:歌手、ダンサー、俳優、プロDJなど、公衆の前で演奏や演芸(パフォーマンス)を見せて収入を得る人のための活動。
ここが最大のポイントです。
作曲家の方が、イベントでDJをしたり楽器を演奏したりして報酬を得る場合、「2. 興行」の活動になることです。
本来「創作(芸術)」をするための在留資格で、「パフォーマンス(興行)」をして収入を得ているとなると、入管から「それは資格外、『芸術』の外の活動ではありませんか?」と指摘を受ける可能性があるのです。
実際にあったケース:入管からの指摘
ひとつの事例です。
作曲家の方が年に数回、ファン向けのイベントでDJ出演をし、「出演費」という名目で数万円程度の謝礼を受け取っていました。
在留期間更新許可申請をしたところ、入管から次のような通知が届きました。
「活動実績の中にDJ活動(出演)が含まれていますが、これは『芸術』ではなく『興行』に当たりませんか?」
たとえ本人が「ファンサービスの一環」や「お小遣い稼ぎ」のつもりでも、入管は厳格に審査を行います。
「芸術」の活動だと自分で考えない
このケースでは「このDJ活動は、あくまで作曲活動(芸術)に付随するものである」と主張し、無事に更新許可をいただきました。
その際にポイントとなったのは、以下の2点です。
1. 「自身の作品発表の場」であること
「自分自身が作曲した楽曲を、作曲家本人がファンに披露する場」であれば、創作活動の延長(芸術表現)と言えるかもしれません。
- セットリストは自作曲が中心か?
- 「作曲家〇〇」としての出演依頼か?
しかし、公衆の前でパフォーマンスをしていることに変わりはありません。在留資格「興行」に近い活動です。
自分で判断をしないで出入国在留管理局にご確認ください。
2. 名目上の謝礼
短期滞在ビザでは働くことができません。しかし、謝礼を受け取ること、交通費などの実費を負担していただくことは禁止されていません。謝礼や実費であれば問題はありませんが…。
たとえ「交通費などの実費補填」や「名目上の謝礼」という扱いであっても、金銭の授受が発生している場合、入管法上は「報酬」とみなされる可能性があります。
みんな「謝礼」といってお金を支払ってしまいます。
「これっぽっちの金額なら問題ないはず」と自分で判断するのは非常に危険です。
迷ったら必ず「入管」か「専門家」へ確認を
今回の事例では、しっかりと説明書を作成し、活動の実態や反省文を提出することで、無事に更新が許可されました。
しかし、最も大切なことは「自分で判断をしないこと」です。
- 「名目上の謝礼だから大丈夫だろう」
- 「年に数回だけだから問題ないだろう」
自分の判断が、在留期間更新許可申請を不許可にします。
出演依頼が来たときは、受諾する前に管轄の出入国在留管理局(就労審査部門など)に相談するか、行政書士などの専門家に確認することをお勧めします。
もし活動内容に疑問がある場合は、事前に「資格外活動許可」を取得しておくことが最も安全で確実な方法です。
資格外活動許可はイベント1回に1回ずつ申請しなければいけません。出入国在留管理局は審査に時間がかかりますので、出演依頼が来たときはすぐに申請をしてください。
クリエイターのみなさまが安心して創作活動に打ち込めるよう、在留資格・ビザのことで不安なことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
