「永住者」の在留資格は、活動内容にも在留期間にも制限がなく、外国人の方にとって最も安定した在留資格です。

ただ、これまでは永住許可の申請時にウソがあった場合を除いて、永住許可を受けたあとに取り消されることはほとんどありませんでした。

しかし令和6年の入管法改正により、永住許可を受けたあとでも一定の事由に該当すれば在留資格が取り消される制度が新しく作られました。今回はその取消事由と、実際にどのようなケースで取消し・職権変更となるのかを解説します。

なぜ永住者の取消し制度ができたのか

「永住者」の在留資格は、在留期間の更新がないため、永住許可後に在留審査を受ける機会がありません。

そのため、永住許可を受けた時点では要件を満たしていても、その後に要件を満たさなくなるケースが一部で見られていました。こうした状況に対応するため、令和6年の入管法等改正法により、永住者の在留資格を取り消すことができる事由が新設されました。

なお、この制度は「永住者に対する不当な運用がなされないよう、定着性や法令違反の悪質性等を厳正に判断し、慎重に運用すること」が国会の附帯決議で求められており、今回のガイドライン(案)はその運用指針を明確化するために策定されるものです。

新しく追加された3つの取消事由

新しく追加された取消事由は次の3つです。

1.故意に公租公課の支払をしないこと

所得税・住民税・法人税や、公的医療保険・年金保険料などの「公租公課」について、支払義務があることを認識しながら、あえて支払をしない場合です。

単に滞納しているというだけでなく、催告や滞納処分を受けてもなお支払う意思を示さない、脱税等で有罪判決を受けたなど、支払意思がないことが明白と認められる場合に該当するとされています。

2.入管法上の義務違反

在留カードの携帯・提示義務や、有効期間の更新・再交付申請の義務など、入管法に定められた義務を守らないことです。

ただし、病気や災害など「正当な理由」がある場合は該当しません。

3.特定の刑罰法令違反により拘禁刑に処せられたこと

窃盗・詐欺・恐喝・殺人などの刑法上の一定の犯罪や、危険運転致死傷などにより拘禁刑に処せられた場合です。刑の執行が猶予された場合も含まれます。

取消しではなく「定住者」への職権変更となるケースが多い

上記の取消事由に該当したとしても、ただちに在留資格が取り消され、日本から出国しなければならないわけではありません。

ガイドライン(案)では、「引き続き本邦に在留することが適当でないと認める場合」を除き、法務大臣が職権で「永住者」以外の在留資格へ変更する「職権変更」を行うとされており、多くの場合は「定住者」の在留資格への変更が想定されています。

職権変更後も、定住者としての在留期間の更新の中であらためて義務の履行状況などが確認されることになり、要件を再び満たせば永住許可を受け直すことも可能です。

一方で、今後も義務や支払いを行う意思がないことが明らかな場合や、義務違反・滞納の態様が社会通念上看過しがたい場合は、職権変更ではなく「取消し」(在留不可)と判断されることになります。

やむを得ない事情がある場合は取消事由に該当しない

今回のガイドライン(案)では、取消事由に該当しないと想定されるケースについても具体的に示されています。

  • 病気、災害、失業などのやむを得ない事情により支払ができない場合(事業不振、感染症流行、DV被害による生活困難なども含む)
  • 催告等に応じて支払う意思を示しており、分納や猶予措置を受けている場合
  • 給与から公租公課が控除されているのに、勤務先の企業が支払っていない場合

このように、本人に帰責性がないと認められる事情がある場合には、取消事由には該当しないとされています。滞納や義務違反があるからといって一律に不利益な扱いを受けるわけではない点は、安心材料と言えるでしょう。

国や自治体からの「通報」の仕組みについて

今回の改正では、国や地方公共団体の職員が、取消事由に該当すると思われる永住者を業務の中で把握した場合に、入管庁へ通報できる規定も新設されました。

ただし、この通報はあくまで取消手続きの「端緒」であり、通報があったからといって直ちに在留資格が取り消されるわけではありません。通報を受けたあと、入管による事実の調査や本人への意見聴取を経て、最終的に法務大臣が取消しの要否を判断することになります。

まとめ

永住者の在留資格取消し制度は、これまで安定していた永住者の地位に新しいリスクが生まれたとも言えます。とくに公租公課の滞納については、放置せず早めに分納・猶予の相談をしておくことが取消しを回避する重要なポイントになります。