永住許可(永住ビザ)の審査基準を定めた「永住許可に関するガイドライン」が改定されることになりました。

今回の改定は小さな見直しではありません。独立生計要件の収入基準の引き上げ、年金加入状況の新しい考え、日本語能力の要件化など、これまでよりも厳しいルールとなります。

すでに永住を目指して準備をされている方、これから申請を検討されている方にとって影響が大きい改定ですので、今回はガイドライン改定(案)の内容をわかりやすく解説します。

なぜ今回ガイドラインが改定されるのか

永住許可は、「素行善良要件」「独立生計要件」「国益要件」の3つをクリアしたときに許可されます。

今回の改定では、この3要件のうち「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」と「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」の2つについて具体化・厳格化されます。

背景にあるのは、永住者の在留資格が「活動・在留期間の制限がなく、生涯を本邦で過ごすことが想定される最も安定した法的地位」であるという位置づけです。今回のガイドライン改定では、この点があらためて明記され、「特に慎重な審査を行う必要がある」とされました。

一方で、我が国の発展に貢献することが期待できる外国人材を呼び込むためのインセンティブとしても永住者の在留資格を位置づけており、国際的な人材獲得競争という観点も踏まえたバランスの取れた制度を目指しているとされています。

つまり、これまで以上に「日本で安定して自活できるか」「日本社会に適応できているか」がしっかりと見られるようになる一方で、優秀な外国人材にとっては引き続き魅力のある制度であり続けることを目指す改定、ということになります。

独立生計要件①:収入水準の考え方が厳格化

収入基準の引き上げ

これまでも独立生計要件では世帯の収入が審査されてきましたが、改定後は「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準(年収水準)」に継続して達しているかどうかが基準となります。

これまでの「安定した生活を維持できる収入があるか」という比較的ゆるやかな基準から、「日本人と同等水準以上の経済条件」という、より明確で高いハードルに変わります。

「世帯年収」に含まれる範囲・含まれない範囲

見落とされがちなポイントとして、この収入基準は申請者ひとりの年収ではなく、同一生計世帯の世帯年収で判断されるという点があります。具体的には次のような考え方が示されています。

  • 申請者自身が父母の扶養からすでに外れている成人した子などである場合は、父母の収入を合算せず、申請者本人の収入のみで年収水準への到達を判断します
  • 「家族滞在」など就労を目的としない在留資格の方が資格外活動許可を得て得ている収入は、世帯年収にプラスされません
  • 申請者が扶養している親族(海外に住む親族を含む)がいる場合は、その人数分も世帯人数としてカウントされます
  • 世帯人数が5人以上になる場合は、その分の生活費増加を見込んで年収水準額が加算されます

つまり、共働きかどうか、扶養家族の人数、海外に住む扶養親族の有無などによって、実際に必要な年収水準は世帯ごとに変わってくることになります。ご自身の世帯構成でどの程度の年収が必要になるのか、事前にシミュレーションしておくことが重要です。

独立生計要件②:年金の受給見込額が新たに審査される

今回の改定でとくに注目すべきなのが、年金の受給見込額が新たに独立生計要件の新しいルールとして追加された点です。

具体的には、申請時点までの年金加入状況(働き方、加入期間、その期間の平均年収など)から推計される将来の年金受給見込額が、「日本人世帯の平均収入を上回る年収水準で30年間厚生年金に加入していた場合に受給できる年金水準(受給年金水準)」に達しているかどうかが確認されます。

受給見込額が足りない場合は「補填資産」で評価される

もし将来の受給見込額がこの水準に届かない場合でも、その不足分を補える金融資産(補填資産)を持っていれば、要件を満たしたものとして評価されます。

補填資産の基準額は申請時の年齢に応じて設定され、若い方ほど今後の資産形成の余地があることを踏まえて、基準額は低めに設定される仕組みです。逆に、年金の受給開始年齢に近い方ほど、より多くの補填資産が必要になります。

また、配偶者がいる場合は、申請者本人と配偶者の受給見込額を足したうえで、配偶者が国民年金の第3号被保険者であった場合の年金見込額を加えた水準と比較する、という合算のルールも定められています。

会社員として厚生年金にしっかり加入してきた方はもちろん、自営業の方、転職を繰り返してきた方、非正規雇用の期間が長かった方などは、この年金のルールについて申請前にご自身の状況を確認しておくことが大切です。

国益要件に追加された新しい3つのポイント

国益要件についても、これまでの公租公課の支払い状況や刑罰法令違反の有無、上陸拒否事由への非該当などに加えて、次の3つが新たに考慮要素として明記されました。

  • 日本語能力:CEFR(日本語教育の参照枠)のB1相当(自立した言語使用者)レベル以上の日本語能力
  • 我が国の制度・ルール等への理解:出入国在留管理庁長官が指定する方法により、「生活・就労ガイドブック」に記載されている事項を中心とした制度理解の確認
  • 学齢期の子の就学:義務教育の期間にある子を小学校または中学校に通学させているかどうか(申請者自身が学齢期にある場合は本人の通学状況)

日本語能力の要件が免除されるケース

日本語能力については、次のような方は必ずしも本人にB1相当以上の日本語能力を求める必要性・相当性がないとしています。

  • 高度人材外国人やその家族
  • 日本の小学校・中学校・高等学校などでの教育(初等教育又は中等教育)を通算6年以上受けた方
  • 永住者の子(子を養育する親がB1相当以上の日本語能力を有し、かつ子が日本で生まれた場合)

ご自身やご家族がこれらに当てはまるかどうかによって、日本語能力の証明が必要かどうかが変わってきますので、事前の確認が欠かせません。

「公共の負担とならないこと」の評価も厳しくなる

独立生計要件の適用が不要とされる方(日本人・永住者・特別永住者の配偶者又は子、難民として保護された方など)であっても、国益要件のなかの「公共の負担とならないこと」というルールは引き続き審査されます。

改定後のガイドラインでは、こうした独立生計要件が不要な類型の方であっても、現に公共の負担となっている場合や、そのおそれが現実的である場合には、消極的に評価されることが明記されました。

ただし、家族単位での在留の安定や人道的な配慮の観点も重視して総合的に判断するとされていますので、全員が厳しく判断されるわけではありません。

素行善良要件は基本的に変更なし

3つの要件のうち「素行が善良であること」(素行善良要件)については、今回の改定で特段の変更はありません。法律を遵守し、日常生活において社会的に非難されることのない生活を送っていることが引き続き求められます。

配偶者等の「原則10年在留」の特例期間が延長

永住許可には、本来必要な「引き続き10年以上の在留」の期間を短縮できる特例が設けられています。今回の改定では、日本人・永住者・特別永住者の配偶者等について、この特例の条件が次のとおり延長されます。

区分現行改定後
婚姻期間(実体を伴った婚姻生活)3年以上5年以上
本邦在留期間1年以上3年以上

婚姻期間の延長(3年→5年)は配偶者に関する要件ですが、本邦在留期間の延長(1年→3年)は配偶者だけでなく実子等にも適用されます。実子の場合は「引き続き3年以上本邦に在留していること」という在留期間の要件のみが延長される形です。

なお、「定住者」として5年以上在留している場合の特例や、高度人材・特別高度人材に関する特例については、今回の改定では変更されていません。

配偶者ビザ・実子として永住ビザへの切り替えを考えていた方にとっては、これまでより長く待つ必要が出てくる可能性がありますので、早めに今後のスケジュールを見直しておくことをおすすめします。

長期間在留要件(原則10年)の考え方と経過措置

特例の対象とならない場合、永住許可を受けるには原則として引き続き10年以上本邦に在留していることが必要で、そのうち5年以上は就労資格又は居住資格をもって在留していることが求められます。

さらに、次のいずれかに該当する場合は、この10年の在留期間についても消極的に評価される点は改定後も変わりません。

  • 過去10年以内に、合理的な理由なく一回の出国で半年以上不在にした期間がある場合
  • 過去10年以内の不在期間が通算で2年6か月以上に及ぶ場合

現在「在留期間3年」を持つ方への経過措置

なお、現在「在留期間3年」の在留資格をお持ちの方については、一定の経過措置が設けられています。令和9年3月31日までに申請する場合は、引き続き「最長の在留期間をもって在留している」ものとして扱われます。

また、令和9年4月1日以降に申請する場合であっても、令和9年3月31日時点で在留期間3年を有しており、かつ改定後初めての永住許可申請であるなど一定の条件を満たせば、同様の扱いを受けられる場合があります。

ご自身がこの経過措置の対象になるかどうかは判断が難しい部分ですので、該当しそうな方は早めにご相談いただくことをおすすめします。

「我が国への貢献」特例は本体ガイドラインに統合

これまで、日本政府からの表彰やノーベル賞受賞など「我が国への貢献があると認められる者」については、独立した「我が国への貢献に関するガイドライン」において定義され、原則10年在留の特例(5年以上の在留での適用)などに活用されてきました。

今回の改定にあわせて、この独立した「我が国への貢献に関するガイドライン」は廃止されますが、特例の内容自体がなくなるわけではありません。国民栄誉賞やノーベル賞・フィールズ賞の受賞者、東京証券取引所プライム市場上場企業の役員経験者など「我が国への貢献があると認められる者」の定義や特例は、永住許可に関するガイドライン本体に統合される形で引き続き維持されます。

施行時期のまとめ

今回のガイドライン改定は、令和9年(2027年)4月1日以降の申請から適用されるのが原則です。

ただし、次の2点については、これより一足早く令和8年(2026年)10月から先行して施行される予定です。

  • 独立生計要件のうち収入に関する部分(世帯年収の基準)
  • 独立生計要件が不要な類型における「公共の負担とならないこと」の評価

しかも、この先行施行分については、施行日から6か月前に遡って行われた申請であって、施行日時点でまだ審査中の案件にも適用されるとされています。これから申請準備をされる方はもちろん、すでに申請中の方にとっても影響がある内容ですので、注意が必要です。

よくあるご質問

Q. すでに申請中の永住許可申請にも今回の改定は適用されますか?

原則として令和9年4月1日以降の申請から適用されますが、収入に関する基準など一部の項目は施行日から6か月前に遡って適用される経過措置があります。申請中の方は、ご自身の申請時期が対象になるかどうかを確認しておくことをおすすめします。

Q. 日本語能力はどのように証明すればよいですか?

具体的な証明方法(日本語能力試験の合格実績や在留歴など)については、今後の運用の中で明確化されていくものと考えられます。現時点で不安がある方は、ご自身の状況について個別にご相談ください。

Q. 年収水準に届いていない場合、永住許可はまったく望めませんか?

年収や年金の受給見込額が基準に届かない場合でも、金融資産(補填資産)の保有状況などが総合的に考慮されます。世帯構成や資産状況によって必要な水準は変わりますので、あきらめる前にまずは現状を整理してみることをおすすめします。

JOY行政書士事務所にできること

永住許可の基準は今回の改定でこれまで以上に細かく、そして厳しくなります。とくに収入・年金・日本語能力・在留期間の要件については、申請前にご自身の状況を客観的に確認しておくことが許可への近道です。

「自分の世帯構成でどのくらいの年収が必要になるのか」「日本語能力の証明はどうすればいいのか」「今の在留資格・在留期間で特例の対象になるのか」など、ご不安なことがございましたらお気軽にご相談ください。

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