国籍留保の届出が必要ないとき

Q
私は日本人で、外国籍の方と結婚をしています。日本で子どもを授かりました。市役所にたずねたところ国籍留保の届出は必要がないといわれましたが本当ですか?
A

はい。日本で出生をしたときは国籍留保の届出は必要ありませんのでご安心ください。

国際結婚をされたご夫婦がお子さまを授かったとき、国籍留保の届出をしないとお子さまが日本国籍を失ってしまうと聞いたことがあるかもしれません。

日本国籍を失ってしまうとお相手の方の外国籍になるのか、もしかしたら無国籍になってしまうのではないかと心配をしてしまいます。

かくいう私も息子が生まれて市役所に出生届を提出するときに「国籍留保をチェックする箇所がありませんが大丈夫ですか?」と窓口で必死になってたずねました。

ちゃんと国籍法を確認しなかったのは行政書士として恥ずかしい話です…

出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う。

国籍法第十二条

こちらの法律に国籍留保の届出が書かれています。

”出生により””外国の国籍を取得した””日本国民で国外で生まれたもの”だけが国籍留保の届出をしなかったときに生まれたときまでさかのぼって日本国籍を失います。

そのため日本国内で生まれた日本人の子どもは、たとえ出生により外国の国籍を取得しても、日本国民として日本国内で生まれていますので国籍留保の届出は必要ありません

国籍留保の届出はあくまで国外で生まれた場合のみ必要になります。

駐日外国大使館に出生届を提出すると日本国籍はどうなる?

Q
日本で出生届を提出したあとに大使館で出生届を提出して子どもの外国籍を取得しました。日本国籍はなくなってしまったのでしょうか?
A

いいえ。日本国籍も外国籍も持っています。お子さまは二重国籍になりました。

日本は二重国籍を認めていませんが、二重国籍の日本人がいないわけではありません。

出生によって二重国籍を取得したときは、駐日大使館に出生届を提出して外国籍を取得しても日本国籍は失いませんのでご安心ください。

まず、国籍は”自動的””自己の意思”、この2つのパターンで取得することができます。

”自動的”とは、出生によって国籍を取得するケースです。出生によって国籍を取得するパターンはさらに「血統主義」と「出生地主義」に区別されますが、ここでは説明を省かせていただきます。日本やタイは「血統主義」、アメリカは「出生地主義」です。

”自己の意思”とは、帰化許可申請などが含まれます。

日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。
 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う。

国籍法第十一条

”自己の志望”によって外国籍を取得したとき=帰化許可申請などによって外国籍を取得したときは日本国籍を失います。

しかし”自動的”=出生によって外国籍を取得したときは日本国籍を失いません。

駐日大使館に出生届を提出することで外国籍を取得するわけではありません。出生届はただの届出です。出生の”許可”を取っているわけではありませんし、帰化許可申請のように外国籍の”許可”を取っているわけではありません。

あくまで出生の報告で、子どもはだれかの許可を取るわけではなく、生まれたことによって国籍を”自動的”に取得しています。

そのため日本の市役所に出生届を提出したあとに駐日大使館に出生届を提出しても日本国籍を失いません。

私の息子は日本の市役所で出生届を提出したあとに在大阪タイ領事館に出生届を提出しましたので日本国籍とタイ国籍を持つ二重国籍者です。

日本のパスポートとタイのパスポートを所持しています。

まとめ

「子どもが生まれたから国籍留保の届出をしないと!」と焦るお気持ち、私もよくわかります(実際、私も焦っていました)。

国籍法を見ておわかりのとおり、日本国内で生まれた子どもは国籍留保の届出をする必要はありません

「血統主義」、「出生地主義」とありますが自動的に取得した国籍はどちらか選択をするまで失うことはありません。お子さまは二重国籍者として日本で生活ができますのでご安心ください。

ただ日本は二重国籍を認めていません。外国も国によっては二重国籍を認めていないかもしれません。外国の法律がどのようになっているのか、それはご自身でお調べください。