子どもが自動的に日本国籍を取得するためには

  1. 出生の時に父又は母が日本国民であるとき
  2. 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき
  3. 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき

この3パターンが国籍法に規定されています。

そのため父親の国籍が不明なとき=父と母が結婚をしていないときに外国籍の母親が子どもを産んだときは子どもは日本国籍を取得することができません。

血縁上(遺伝上)の父親が日本人であっても、結婚をしていないために”絶対にこの子の父親だ”と国が認めることはないのです。

もし未婚の父が産まれた子を我が子だと認めるためには認知をしなければいけません。

そして我が子に日本国籍を取得させるためには法務大臣に届け出なければいけません。

外国籍の子どもを認知する方法

認知とは婚姻外に生まれた子を血縁上の父が自分の意思によって、自分の子であると認める行為をいいます(自分の意思=任意認知とは別に強制認知がありますが説明を省略します)。

ここで問題となるのが外国籍の母親をもつ子どもの認知の届出です。

認知は子どもを認知する父の本国法(日本の法律)、または認知される子の本国法(外国の法律)いずれかの法律による手続きを取ることができます。

外国籍の母親をもつ子どもは未婚の両親から生まれると外国籍の母親の国籍のみを取得します。そのため外国の法律でも認知をすることができます。

たとえば日本国籍の父とタイ国籍の母が未婚のとき、生まれた子どもはタイ国籍のみを取得します。

そのため子どもを認知するためには日本の法律か、タイ国の法律の手続きか、どちらかの手続きを先にするか選ぶことができます。

先に外国で手続きを終えてから日本大使館に届出をする認知を報告的認知届といい、先に日本大使館で認知の届出をする認知を創設的認知といいます。

日本と外国、簡単な手続きから選びたいところですがそうはいきません。

先に日本大使館で認知をする創設的認知をしてしまうと、外国での認知の手続きができなくなる国があります。

またタイ国を例にあげると、タイ国民商法が定める保護要件(認知に対する子と母双方の同意)を備えなければ日本大使館で認知ができない国もあります。

認知される子が未成年者などで、子本人に認知に同意する意思能力(承諾能力)がないと判断される場合は、父がタイ国裁判所に対して子(母)の同意に代わる後見的許可を求め、裁判所からその許可を相当とする司法命令を得ることで、保護要件を充足させなければなりません。これに対して、子に認知に同意できる一定の意思能力があると判断される場合は、子及び母が認知登録書に同意する旨の署名をすることで保護要件が充足されます。

在タイ日本大使館HPより

母親=子どもの国籍によってはこのような複雑な手続きをしないと子どもの認知ができないかもしれません。

タイ国ほど複雑な手続きを取る国もそうそうないかと思いますが、在外日本大使館、在日外国大使館に相談をしながらすすめてください。

胎児認知、出生後認知でも書類は変わります。ご注意ください。

※タイ国は未婚の夫婦が結婚をすると子どもは自動的に認知をした子どもとして扱われます。そのため裁判が必要ではなくなりますので、日本大使館に認知の届出をするだけで大丈夫です。

認知をしたら終わりではない。日本国籍の取得方法

無事に認知の届出が受理されても、それで終わりではありません。

認知の届出をすることで日本国籍をもつ”血縁上の父親”が子どもの”法律上の父親”であることが日本国に認められましたが、子どもの国籍はどうなっているのでしょうか?

もう一度国籍法を確認します。

1.出生の時に父又は母が日本国民であるとき
2.出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき
3.日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき

国籍法第二条

子どもが自動的に日本国籍を取得できるのはこの3パターンだけです。

認知をしたとき、子どもはすでに出生をしているので1には当てはまりません。
父が死亡していないので2も違います。
父が認知をしているので3にも該当しません。

そうなんです。認知をしただけでは子どもは外国籍のままで、日本国籍を取得したわけではないのです。

父又は母が認知した子で二十歳未満のもの(日本国民であつた者を除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。

国籍法第三条

日本国籍をもつ父親に認知をされた子どもは、務大臣に届け出ることによって日本国籍を取得します。

逆にいえば、法務大臣に届け出なければ認知をされても日本国籍は取得できないのです。

認知の届出が受理されたときに市役所や日本大使館から法務大臣に報告をしてくれれば二度手間にならないのですが、そこはお役所仕事といいましょうか、法律が面倒なのか…

残念ながら、いまは認知の届出とは別に国籍取得届を提出しなくては子どもは日本国籍を取得できません。国籍取得届出は在外日本大使館でも受け付けています。

忘れずに届出を行ってください。

認知をしないで、国籍取得届をしないで日本に来る方法

認知をしていない、また認知をしていても日本国籍を取得していない子どもが長期間日本に滞在するためには在留資格が必要になります。

在留資格がない外国籍者は90日以上日本に滞在することができません。

外国籍の母親は日本国籍者の父親と結婚をすることで「日本人の配偶者等」の在留資格の申請ができますが。

では認知をしていない、日本国籍を取得していない子どもはどの在留資格で日本に長期間滞在することができるのでしょうか?

認知をしていない子どもの場合

認知をしていない子どもは日本国籍の父親と法律上のつながりがありません。国籍も外国籍のままで、日本国籍=日本のパスポートを持っていませんので日本人として来日できません。

この場合の在留資格は、外国籍である母親の連れ子として「定住者」の在留資格を申請します。

在留資格「定住者」で来日後、認知をするのか、認知をしたあとに日本国籍取得届をするのかお考えください。

認知はしたが日本国籍を取得していない子どもの場合

認知をした子どもは”法律上”の子どもとして扱われます。そのため日本国籍の父親の子どもになりますので、在留資格は「日本人の配偶者等」の申請ができるようになります。

在留資格は日本で行う活動内容によって変わります。

「定住者」を申請するのか、「日本人配偶者等」を申請するのか注意をしてください。

認知をして国籍取得届もした子どもの場合

日本国籍を取得すれば日本のパスポートが入手できます。空港の出国窓口で日本のパスポートを提示すれば日本人として来日ができますので、在留資格は必要ありません。

まとめ

認知と日本国籍取得届についてご説明しました。

外国に住んでいるときは専門家が近くにいなくて大変かと思いますが、在外日本大使館に相談をしながら届出を行ってください。

とくに国籍取得届を忘れてしまうと、いざ日本に帰国をするときに在留資格の申請が必要になってしまいます。在留資格の申請は結果が出るのに2カ月以上かかりますので、場合によっては家族全員で日本に来ることができなくなります。余裕をもって申請の準備をしてください。

JOY行政書士事務所は在留資格の申請、国籍取得届出の申請を取り扱っています。

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