特定技能外国人を雇用するとき、企業側は採用する外国人の支援計画を作成しなければいけません。

支援計画は特定技能外国人が円滑に日本で活動ができるように、職業上・日常生活上・社会生活上の支援に関する計画をいい、支援計画が法律に適合していないと在留資格は不許可になり特定技能外国人を雇用することはできません。

登録支援機関は必要か?

支援計画は義務的支援と任意的支援に分かれます。任意的支援は必要があれば計画書に記載をしますが、支援計画書に記載をした場合は絶対に実施しなければいけません。

義務的支援は必ず実施しなければいけませんが、特定技能外国人を雇用する企業が実施する必要はなく、登録支援機関に全部(または一部)を委託することも可能です。

登録支援機関に支援計画を委託する場合であっても、義務的支援の費用を特定技能外国人に負担させることはできません。特定技能外国人を雇用する企業はその分人件費が高くなります。

そのため多くの企業が支援計画を企業側で行うことでしょう。その場合、支援責任者は特定技能外国人の直系の上司では許可が下りません。支援計画では労働法違反などがあったときは支援責任者に相談することとなっています。残念ながら労働法違反を行うのは上司の指示の場合が多く、支援責任者が上司では相談が難しいとの判断です。

支援責任者は直系の上司ではなく、横のつながりで労働法にも詳しいと思われる総務課の職員が推奨されています。出入国在留管理局では会社の組織図の提出も求めるようです。

小さな企業や個人経営の飲食店などでは総務の仕事を経営者の親族の方がやられています。それでは支援責任者としての中立性が保たれないため、企業内で支援責任者を任命することは難しいかもしれません。そのときは登録支援機関に支援計画の委託をしなければいけないでしょう。

支援計画の中身

支援計画の中身は以下のとおりです。

  1. 事前ガイダンス
  2. 出入国の送迎
  3. 生活に関する支援
  4. 生活オリエンテーション
  5. 相談、苦情への対応
  6. 日本語学習の機会の提供
  7. 日本人との交流支援
  8. 退職した後の転職支援
  9. 定期的な面談と行政機関への通報

ひとつずつ見ていきます。
(支援計画の実施者を企業と書きますが、登録支援機関に委託することもできます)

事前ガイダンス

企業は「特定技能」の在留資格認定証明書交付申請(変更許可申請)をする前に事前ガイダンスを終えている必要があります。そのため実施予定日は申請日の前になります。

a.従事する業務の内容,報酬の額その他の労働条件に関する事項
b.本邦において行うことができる活動の内容
c.入国に当たっての手続に関する事項
d.保証金の徴収,契約の不履行についての違約金契約等の締結の禁止
e.入国の準備に関し外国の機関に支払った費用について,当該費用の額及び内訳を十分に理解して支払わなければならないこと
f.支援に要する費用を負担させないこととしていること
g.入国する際の送迎に関する支援の内容
h.住居の確保に関する支援の内容
事前ガイダンスの提供内容

事前ガイダンスでは以上の内容を説明する必要があります。特定技能外国人が海外などにいる場合はテレビ通話ですることも可能です。しかし本人確認ができない手紙やメールでのやり取りは認められていません

特定技能外国人がわかる言語(母国語)で行い、3時間以上は行わなければいけません。

出入国の送迎

特定技能外国人が入国する際は空港まで迎えに行き、出国するときは空港まで送らなければいけません。

送迎の方法ですが、電車やタクシーなど公共交通機関を利用することも可能です。

出入国の送迎は義務的支援ですので、交通費は企業側が負担しなければいけません。

生活に関する支援

生活に関する支援では、まず特定技能外国人が住む住居が問題となります。住居(居室)の広さは1人7.5㎡以上なければいけません。なぜかロフトは面積に含まれません。ルームシェアをする場合は面積を人数で割った広さが7.5㎡以上必要です。

ただし、技能実習生が住み慣れた住居を希望するときは4.5㎡以上あれば問題ありません。引っ越しをさせる必要はありません。(技能実習生のほうが部屋が狭くても問題がない)

家賃の支払いも含め、敷金・礼金の支払いも特定技能外国人に請求できます。

しかし社宅を一棟建てたり、アパートを一棟丸ごと借り上げている場合は一部屋の値段が決まらない場合があります。その場合は一棟の値段を部屋数で割った値段、また近隣のアパートの平均家賃を特定技能外国人に請求してください。あまりに高い値段ですと申請が不許可になります。

あとは銀行通帳の作成、携帯電話の契約、水道・ガス・電気の契約手続きの支援が必要です。

生活オリエンテーション

生活オリエンテーションは特定技能外国人がわかる言語(母国語)で行います。方法はテレビ電話などでも可能ですが、質問があった場合に答える必要があります。特定技能外国人はすでに来日していますので口頭(面談)で行い、必要があれば書面にまとめたものを渡すのが簡単でしょう。

特定技能外国人が理解できるように8時間以上行う必要があります。

a.本邦での生活一般に関する事項
b.法令の規定により外国人が履行しなければならない国又は地方公共団体の機関に対する届出その他の手続に関する事項及び必要に応じて同行し手続を補助すること
c.相談・苦情の連絡先,申出をすべき国又は地方公共団体の機関の連絡先
d.十分に理解することができる言語により医療を受けることができる医療機関に関する事項
e.防災・防犯に関する事項,急病その他の緊急時における対応に必要な事項
f.出入国又は労働に関する法令規定の違反を知ったときの対応方法その他当該外国人の法的保護に必要な事項
生活オリエンテーションの提供内容

相談、苦情への対応

相談・苦情の対応は特定技能外国人の勤務時間にあわせて、勤務日に3日以上休日に1日以上対応し、相談しやすいように就業時間外などにも対応しなければいけません。
(たとえば17時に勤務が終わる企業では月・水・金の17時~20時。日曜日の13時~17時など)

相談方法は電話・メールの連絡先を設け、いつでも対応できるようにしなければいけません。しかし連絡先は支援責任者ではなく、特定技能外国人が母国語で相談・苦情が言えるように通訳者であっても問題ありません。

日本語学習の機会の提供

日本語学習は以下の1~3の方法となります。

  1. 地域の日本語教室や日本語学校の情報を提供し、特定技能外国人に同行して入学の手続きの補助を行う
  2. 自主学習のための日本語テキストやオンラインの日本語講座に関する情報を提供し、契約の手続きの補助を行う
  3. 特定技能外国人との合意があれば、日本語教師と契約をして日本語校風の機会を提供する

日本人との交流支援

特定技能外国人と日本人との交流を促進するため、”地方公共団体やボランティア団体等が主催する地域住民との交流の場に関する情報の提供や地域の自治会等の案内を行い,各行事等への参加の手続の補助を行うほか,必要に応じて同行して各行事の注意事項や実施方法を説明するなどの補助を行う”、”日本の文化を理解するために必要な情報として,就労又は生活する地域の行事に関する案内を行うほか,必要に応じて同行し現地で説明するなどの補助を行う”とされています。

これらの交流は季節行事に参加をすることで年間を通して行うことが望まれます。

退職した後の転職支援

人員整理や倒産など企業側の都合により特定技能外国人を解雇する場合、企業は特定技能外国人の転職を支援しなければいけません。

a.所属する業界団体や関連企業等を通じて次の受入れ先に関する情報を入手し提供する
b.公共職業安定所,その他の職業安定機関等を案内し,必要に応じて支援対象者に同行して次の受入れ先を探す補助を行う
c.1号特定技能外国人の希望条件,技能水準,日本語能力等を踏まえ,適切に職業相談・職業紹介が受けられるよう又は円滑に就職活動が行えるよう推薦状を作成する
d.職業紹介事業の許可又は届出を受けて職業紹介を行うことができる場合は,就職先の紹介あっせんを行う
e.1号特定技能外国人が求職活動をするために必要な有給休暇を付与する
f.離職時に必要な行政手続について情報を提供する
g.倒産等により,転職のための支援が適切に実施できなくなることが見込まれるときは,それに備え,当該機関に代わって支援を行う者を確保する
転職支援の提供内容

情報提供は”口頭”となります。実施予定日は解雇事由が発生したときになりますので”適宜”で問題ありません。

定期的な面談と行政機関への通報

企業は特定技能外国人と上司(同一の部署で働く職員など指揮命令を有する者)とそれぞれ3か月に1回以上面談をする必要があります。面談は対面でなければならず、必要なら書類を用意します。特定技能外国人がわかる言語(母国語)で行います。

まとめ

以上が支援計画の書き方です。支援計画も在留資格の審査で重要なポイントです。支援計画で在留資格が不許可にならないようにご注意ください。