人材不足を解消するため外国人留学生のアルバイトに「特定技能」を取ってもらい、社員として働いてほしいと考えている飲食店は多いと思います。
また、外国人留学生から「特定技能」を取るので採用をしてほしいとお願いをされている飲食店があるかもしれません。外国人留学生を「特定技能」で採用するメリット・デメリットを考えてみたいと思います。
留学生アルバイトを「特定技能」で採用するメリット・デメリット
メリット
- すでに日本に滞在しいてるため海外から呼ぶ必要がない
- 海外から呼ぶ必要がないため悪質ブローカーが介在しない
- 日常会話レベルの日本語能力が保証されている
- 技能測定試験に合格する可能性が高い
- 銀行口座の開設などが必要なく生活支援が楽
- アルバイトとして業務に慣れているため採用後の研修が楽
デメリット
- ほかのアルバイトとかけ持ちをしてオーバーワークをしているかもしれない
受入機関の面倒な手続きがかなり減りますので、メリットしかありません。
留学生がオーバーワークさえ気をつけて、日本語能力と技能測定試験に合格すれば学校卒業後すぐに採用できます。
では、アルバイト先はどのような準備をすればいいのか見ていきます。
アルバイト先(受入機関)の条件
外食業の対象業務
外食業の対象分野は日本標準産業分類
76 外食
77 持ち帰り・配達飲食サービス業
に含まれる飲食店の「食材調理、接客、店舗管理」業務です。
また日本人が通常従事するほかの関連業務「原材料調達・受入れ、配達作業」も認められます。簡単に言えば、外食業はアルバイト業務がそのまま「特定技能」の業務として認められます。
外国人に従事させる業務が該当するかわからないときは保健所長の営業許可証を確認すれば外食業分野に該当するかわかります。
※留学生のアルバイトと同じで「接待飲食等営業」を営む飲食店では「特定技能」が認められません。
※在留期間中「調理だけ」「接客だけ」「店舗管理だけ」の業務はできません。まんべんなく3つの業務に従事する必要があります。
アルバイト先(受入機関)は法律遵守
技能実習法が奴隷法などと国会で取り上げられたため、「特定技能」の受入機関のハードルが高くなっています。
受入機関は”労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していること”が規定されています。過去5年以内に罰金刑に処せられてもいけません。
また「特定技能」で雇用する”1年以内に同種の業務に従事していた労働者を離職させていないこと”と規定されています。これは日本人の雇用を守るためです。
入管法も合わせて法令を細かく見ていくと私のホームページが埋まってしまいます。それほど受入機関の要件は厳しいです。アルバイト先は常日頃から法令遵守をしていないと「特定技能」の受入機関になれません。外国人留学生にオーバーワークをさせるのはもってのほかです。
外国人の支援計画
「特定技能」で外国人を採用する場合、出入国在留管理局に支援計画を提出しなければなりません。
支援計画の要件も盛りだくさんなので一部のみ紹介します。
- 入国前又は在留資格変更申請前における、留意すべき事項に関する情報の提供の実施
- 出入国港又は飛行場における外国人の送迎
- 生活一般に関する知識、法令の規定によりすべき手続きに関する知識。支援計画の実施の委託を受けたものにおいて…
生活支援は「登録支援機関」に一部、または全部を委託することが可能です(3にも支援機関の実施の委託と書かれています)。しかし1、2、3を見てもわかるとおり、留学生アルバイトを「特定技能」で採用する場合、生活支援はあまり苦労がないと考えられます。
「協議会」の登録
留学生アルバイトも技能測定試験に合格、会社も法令を遵守しているので問題がない。よし、在留資格を変更しよう、とはなりません。各業種ごとに「協議会」に登録する必要があります。
外食業では「農林水産省、関係業界団体、登録支援機関その他の関係者で構成される外食業分野における特定技能外国人の受入れに関する協議会」に登録します。
登録後は「協議会が行う調査、情報の共有その他の活動に対し、必要な協力を行うこと。農林水産省が行う調査、指導その他の活動に対し、必要な協力を行うこと」と義務付けられています。
これだけでも面倒ですが、「特定技能」採用後も出入国在留管理局にたくさんの報告義務をしなければいけません。
「特定技能」採用後の報告義務
随時(事由発生後14日以内)
- 特定技能雇用契約に関わる届出書
- 支援計画変更に係る届出書
- 支援委託契約に係る届出書
- 受入れ困難に係る届出書
- 出入国又は労働に関する法令に関し、不正又は著しく不当な行為に係る届出書
四半期ごと(初日から14日以内)
- 受入れ状況に係る届出書
- 支援実施状況に係る届出書
- 活動状況に係る届出書
報告義務を怠った場合には罰則があり、入管法違反により「特定技能」の受入機関の許可が取り消しになります。
在留資格変更許可申請の必要書類
人材不足の解消としてできた「特定技能」ですが、ここまで準備ができてやっと在留資格変更の申請ができます。
必要書類は
- 在留資格変更許可申請書
- 受入機関(所属機関)の概要を明らかにする資料
- 活動内容、期間、地位及び報酬を証する文書
- 受入れ機関による申請人に対する支援に係る文書
- 日本語能力を証する資料
- 従事する業務に関して有する技能を証する資料
3は雇用契約書を提出すれば問題ありません。4は「特定技能」に特徴的な書類です。必要書類を過不足なく準備をして、スムーズに許可が取れるようにしたいです。
「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」
今まで外国人留学生が飲食店で正社員として働く場合、「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザを取得していました。しかし専門学校を卒業した留学生は「専門性」の証明ができなくて帰国していたのが実情です。
第1回の外食業特定技能 1 号技能測定試験がすぐに定員オーバーになったのも実情を反映しています。
今後は「特定技能」ができたことで「技術・人文知識・国際業務」の専門性がより厳しく判断されるかもしれません。今まで「技術・人文知識・国際業務」で外国人留学生を採用してきた飲食店も、 出入国在留管理局の判断に左右されます。
「特定技能」の受入機関になるにはハードルが高いのは上記のとおりです。しかし留学生アルバイトを「特定技能」で採用すればいくつかのハードルはクリアできます。
メリット・デメリットを考え、活動内容に合った在留資格を申請しないといけません。