在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、外国人留学生が日本で働くために必要な在留資格です。

”就労ビザ”とも呼ばれていますが、厳密には在留資格とビザは別物です。こちらのブログを読まれる方は、よろしければ在留資格「技術・人文知識・国際業務」と覚えてください。

こちらの記事では、「技術・人文知識・国際業務」の許可を取るための条件と、就職先で見る雇用できる留学生、さらに留学生の就職する業務内容によって必要となる書類について確認していきます。

「技術・人文知識・国際業務」の許可の条件

在留資格の許可を取るためには、2つ、または3つの許可の条件=出入国在留管理局で行われる審査項目をクリアしなければいけません。

許可の条件がこちらです。

  1. 在留資格該当性
  2. 上陸許可基準
  3. 狭義の相当性

在留資格該当性とは?

在留資格該当性とは、法律で決められている在留資格に該当をする活動をするのか、が審査をされます。

たとえば、日本人と結婚をしたときに申請をする「日本人の配偶者等」の在留資格に該当をする活動とは、日本人の配偶者としての活動です。
当たり前ですが、日本人と結婚をしなければ「日本人の配偶者等」の許可は取れませんし、離婚・死別をしたときは別の在留資格に変更をしなければ日本で生活をすることはできません。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格も、在留資格に該当する活動が法律で決められています。

それは、

”日本の公私の機関との契約に基づいて、理学・工学、その他の自然科学の分野、もしくは、法律・経済学・社会学その他の人文科学に属する技術、もしくは知識を要する業務”

”外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務”

に従事する活動です。

簡単にまとめてしまうと、専門性を必要とする仕事でなければ「技術・人文知識・国際業務」で働くことができません。

これが世間でいう、”就労ビザでは単純作業ができない”根拠となります。

上陸許可基準とは?

外国人の方が従事する業務が「技術・人文知識・国際業務」で認められた活動であっても、外国人の方ご本人様が上陸許可基準をクリアしていなければ在留資格の許可は取れません。

「技術・人文知識・国際業務」は、報酬が日本人従業員と同等以上で、

”技術・人文知識”の場合は、母国の大学、または日本の専門学校以上の学歴、または10年以上の実務経験が必要です。

”国際業務”の場合は、通訳・翻訳、語学の指導、広報・宣伝または海外取引、服飾または室内装飾に係るデザイン、商品開発とこれらに類似する仕事の実務経験が3年以上、または日本の大学を卒業したときは翻訳・通訳ができます。

留学生の採用で実務経験を考慮することはありませんので、母国の大学を卒業しているか、日本の専門学校以上を卒業しているか確認が必要です。

学歴の注意点

海外の専門学校は上陸許可基準をクリアしません。海外は大卒のみ有効です。ただし、”学士”が授与されない大学・短期大学は無効となります。

日本は専門学校以上が有効ですが、”専門士”が取得できない専門学校(専門学校別科)は無効とされます。卒業証書などで”専門士”の証明が必要です。

また専門学校を卒業したからといってすべての業務に就けるわけではありません。在留資格該当性に書かれている”技術、もしくは知識を要する業務”をするためには専門的な技術、知識が必要です。

そのため専門学校で学習した内容が業務内容と関連性がないと許可は取れません。商業実務の専門士を取得した留学生が介護現場で働くことはできません。逆も同じです。
ただし、日本の大学は一般教養など幅広い勉強をしているということで、この関連性がゆるく審査されます。海外の大学は関連性がゆるくなりません。

狭義の相当性とは?

狭義の相当性とは、在留状況の良し悪しです。そのため在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請とすでに日本にいる外国人の方が問題になります。

有名なところでは、留学生のアルバイトのしすぎ=オーバーワークです。オーバーワークは法律で決められている犯罪行為ですので、在留状況が不良で申請が不許可になります。

特にオーバーワークは過去のことですので、申請をするときに直すことはできません。オーバーワークで不許可になったときは、おとなしく一度帰国をし、在留資格認定証明書交付申請でいちから申請をし直します。

税金の滞納も厳しく審査をされます。納税証明書を提出するとき、納期分に未納額があるときはすぐに税金を納付してから納税証明書を取り直してください。

もし未納額分を納付できないときは、理由書を作成し、今後の納付についてしっかりとした説明が必要になります。未納のままでは不許可になるかもしれなせん。

留学生の就職先で見る許可の条件

工場などの技能実習生の支援

工場など技能実習生の支援として留学生を雇用します。業務内容は人材管理などのマネジメント通訳・翻訳業務がメインになるでしょう。

技能実習生は一般的にベトナム人が多いので、雇用する留学生もベトナム人かと思います。ネパール人などほかの国の留学生を雇用しても、ベトナム語が話さなければ通訳・翻訳業務はできません。

この場合、日本の大学を卒業していれば学習内容と業務内容の関連性は問題にならないと思います。

専門学校を卒業した留学生は、商業実務か翻訳を勉強した留学生でないと難しいでしょう。観光学科を卒業していても不許可になると思われます。

宿泊業でのホテルフロント

宿泊業は逆にベトナム人留学生の雇用は難しいです。ベトナム人観光客が少ない現在、フロント業でベトナム人留学生が働くことは考えられていません。

観光学科を卒業したベトナム人留学生でしたら許可が取れるかもしれませんが、ネパール人留学生など英語能力がある留学生でないと許可は難しいです。

ネパール人留学生も観光学科を卒業していれば完璧です。商業実務や翻訳でも許可が取れますが、英語能力の説明が必要です。

フロント業務はあくまで翻訳・通訳の業務範囲になります。接客業ではありません

ドアマン、仲居などの接客業務は「特定技能」の業務です。「技術・人文知識・国際業務」ではできません。ベッドメイキングや清掃も同じでできません。

外国人観光客への広報・宣伝、予約管理などのオフィス業務は「技術・人文知識・国際業務」に該当します。

飲食業での店舗管理

飲食業もネパール人留学生の就職先として人気がありましたが「特定技能」ができてから許可が難しくなりました。

「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」はハッキリと区別されています。店舗管理はマネジメントとして「技術・人文知識・国際業務」の許可が取れそうですが、「特定技能」でも店舗管理の業務が認められているため、「技術・人文知識・国際業務」では不許可になる確率が高くなりました。

携帯電話のショップ店員

「特定技能」の在留資格が成立したとき、政府から携帯電話の各会社に外国語対応ができるように要請がありました。

そのためベトナム語やネパール語など母国語での通訳・翻訳業務が認められています。

ただし、複雑な携帯電話の契約を日本人客にも説明する必要があるため、ショップ側が高い日本語能力を求めていて留学生がなかなか就職できません。

コンビニの店舗管理

留学生が多くアルバイトをしていますので、コンビニの店舗管理・人材管理を任せられる人材がほしいかもしれません。

しかし、店舗管理・人材管理を1日・1年ずっとできるのか、空いた時間でレジに立つのではないかと審査が厳しいです。店舗管理・人材管理で許可を取るためには2店舗では厳しいかもしれません。複数店舗の管理が必要になります。

留学生が就職する業務内容で必要になる追加資料

「技術・人文知識・国際業務」は会社の規模=カテゴリーごとに必要書類が変わります。必要書類は出入国在留管理局で案内されていますが、これらの書類を出しただけでは許可は取れません。

特にカテゴリー3に含まれる中小企業は、多くの追加資料を提出してやっと在留資格の許可が取れます。

ここからは、外国人留学生が多く就職する業務で追加資料として求められる書類を見ていきます。

1日の業務スケジュールと1週間の業務スケジュール

出入国在留管理局の審査項目を3つご紹介しましたが、もうひとつ重要視されている審査項目が”業務の安定性、継続性”です。

業務が安定してなければヒマな時間に「技術・人文知識・国際業務」で認められていない単純作業をするかもしれません。業務が継続してなければ1年の許可を与えても1カ月でクビになってしまうかもしれません。

このようなことがないよう、出入国在留管理局は”業務の安定性、継続性”を審査するために『1日の業務スケジュールと1週間の業務スケジュール』の提出を求めます。

この書類はホテル、技能実習の支援、コンビニなど規模が小さい企業で、現場作業と近い業務のときに求められます。

外国人従業員リスト

『1日の業務スケジュールと1週間の業務スケジュール』と同じで、こちらも”業務の安定性、継続性”の説明として必要になります。

技能実習生の支援として雇用をしても、技能実習生2人では1人分の業務量がありません。外国人観光客が少ないホテルに通訳・翻訳をする外国人従業員は何人も必要ありません。

翻訳・通訳の業務がないときに、技能実習生と同じ仕事はできません。ホテルでベッドメイキングや清掃の仕事はできません。

業務量に見合った外国人従業員しか雇用できません。

英語能力の証明

ネパール人留学生の一部は母国ネパールの高校、大学の授業を英語で受けています。英語能力が高く英語の翻訳・通訳としてホテルで雇用をしますが、ネパール人留学生の全員が英語を話せるわけではありません。

出入国在留管理局の審査官もわかっていますので、留学生の英語能力を証明する資料を求めます。

大学の成績証明書で問題ないときもありますが、TOEICなど英語検定の結果が必要になるときがあります。

もし英語能力を証明できないときは、欧米の観光客の相手ができない、ネパール人観光客が少ない、といった業務量の点で不許可になります。

JOY行政書士事務所にできること

在留資格「技術・人文知識・国際業務」の許可の条件と、留学生が就職した先で必要になる書類についてみてきました。

1日の業務スケジュールなどは最初から提出する必要はありません。出入国在留管理局から追加資料として求められたときにご提出ください。

「技術・人文知識・国際業務」の許可が遅れてしまうと、勤務開始日、研修の予定などすべてにおいて狂いが生じてしまいます。不許可になれば、人材計画から見直さなければいけません。

在留資格には許可の条件があり、許可が取れなければ日本で働くことができません。

私は、専門学校の進路指導室で留学生の担当をしていました。ベトナム人、ネパール人、中国人やミャンマー人の留学生と100社以上の許可の条件を見てきた経験があります。

外国人留学生の雇用をお考えの企業は、ぜひJOY行政書士事務所までご連絡ください。御社で問題なく外国人従業員が働くことができるようにサポートいたします。

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