今回のケースは高齢親(老親)扶養の「特定活動」への変更申請でした。ご依頼をいただいたのはイタリア人の方のお孫様です。高齢のおばあ様が日本で生活できるようにと、ご家族皆様がご心配される中での申請となりました。

高齢の親を「短期滞在」で呼び寄せてから

在留資格「特定活動」には”告示”と”告示外”があります。これは法令で規定されているかいないかの違いです。法令で規定されている=”告示”されている「特定活動」ですと、在留資格認定証明書交付申請で海外から呼び寄せることができます。

しかし高齢親扶養の「特定活動」は告示されていません。人道上の理由によって法務大臣が特別に認めている”告示外”の「特定活動」です。そのため、認定申請で呼び寄せることはできません。一度「短期滞在90日」で来日してから変更申請をする必要があります。

今回のケースでは、1月に「短期滞在90日」で来日をされてから新型コロナウイルスのために必要書類が手に入らず、「短期滞在90日」を更新した後での変更申請となりました。新型コロナウイルスのために大使館や母国の市役所の業務が遅くなっています。本当に大変な時期です。

必要な書類と条件

告示外のため法令に規定されているわけではありませんが、高齢親扶養の「特定活動」も必要な書類、条件が決まっています。

  1. 母国で面倒を看てくれる親族がいない
  2. 子どもに扶養されること

基本はこの2点をクリアします。

高齢親とは一般的に65歳以上とされています。今回のケースでは、申請人のおばあ様は80歳以上であり、ご兄弟が母国イタリアにいますが遠くに住んでいること、またご兄弟も80歳を超える高齢でありご兄弟の家族も高齢のご兄弟の面倒を看ることに手いっぱいであることを説明しました。

”2.子どもに扶養されること”ですが、同居は絶対の条件です。別々に暮らすことはできません。
また法令に規定がないとはいえ、人道上認められているのは高齢の親を扶養するための「特定活動」です。そのため申請人の子が親を扶養できるだけの収入がなくてはいけません。2人分の生活費ですので150万円以上は必要だと考えられます。

ここで問題となるのが、申請人が高齢であるほど扶養する子の年齢も上がり、もしかしたら扶養する子がすでに定年退職をしていて条件をクリアできるほどの収入がないケースです。

今回のケースでは申請人の子であるお母様はすでに旦那様を亡くされており、年金等の収入しかありませんでした。そのため申請人のお孫様(お母様のお子様)の収入もプラスして申請ができないか検討をしました。

しかし出入国在留管理局で行政相談をしたところ、同居をしていない孫は世帯収入として認められないとの回答でした。現在同居をしていても孫は将来的に世帯を離れる可能性があるため認められないとも。

これは仕方がない話で、もともと高齢”親”扶養の「特定活動」ですから、”親”の扶養が認められるのは”子”までなのでしょう。(”孫”が扶養をしたら高齢(祖父母)となってしまいます)
また同居をしていない親族まで認めてしまっては、母国で離れて暮らす親族が扶養をすれば良いとなってしまいます。わざわざ日本で生活する必要がなくなってしまいます。

お孫様の収入が当てにできなくなってしまいましたので、お母様の残高証明と今後のお仕事について説明をしました。おばあ様の介護のためにイタリアに行き来する必要があったため、お母様は自宅でされていたイタリア語教室を辞められており、それを再開すれば月に10万円ほどの収入になること、おふたりで生活するには十分な貯金額があることで収入面に問題がないことを説明しました。

審査官としては貯金は減っていくものなので貯金だけでは安定した生活を送ることができるのか疑問を抱く、と説明されました。貯金+収入が必要のようです。

病気、介護は必要か

あくまで”扶養”のための在留資格ですので、高齢親の病気、介護が必要ではありません。元気な親もこの在留資格で申請をすることはできます。

しかし申請人のおばあ様は歩行が難しく、来日してから転倒をしてしまい病院に行きました。それを理由書で説明したところ最新の診断書を求められました。病気、介護の理由があれば許可が下りやすいのかもしれません。

イタリアのかかりつけ医がとてもやさしく、おばあ様の今までの病歴が書かれた診断書を送ってくれました。日本の病院で詳細を調べたところ、おばあ様の転倒の原因がわかり、その病気について理由書で説明をし直しました。

当事務所にできること

このような時期のため、母国にいる親が心配かと思います。大変難しい在留資格ではありますが、高齢の親と日本で一緒に住むことはできます。無事に許可が取れ、ご家族の方から大変感謝をされました。ありがとうございました。

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