名古屋栄にあるオアシス21でLGBT-AIIyイベント「名古屋レインボープライド2019」が開催されました。
色とりどりの参加者が歌やダンスで会場を盛り上げていました。

私は現在、在留資格を専門で行っていますが、開業前は同性カップルの支援を業務に見すえて勉強をしていました。子どものころ、朝の情報番組でファッション評論家のピーコさんが「同性カップルは死んだら愛する人に何も残してあげることができない。忌み嫌われていた家族がやってきてすべてを奪っていく」とおっしゃられていたのがとても印象に残っていたからです。

近年、自治体によってパートナーシップ協定の発効をしていますが、日本では同性婚は認められていません。同性婚が認められない現状で何ができるのか考えます。

同性カップルの在留資格

憲法24条では
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
と記載されています。
両性の合意なら同性でもふたりの合意があれば問題ないと解釈をされますが、同性婚は認められていません。

配偶者ビザは事実婚が認められません。申請には必ず婚姻の証明できる書類が必要になります。
そのため母国で婚姻の証明書が手に入らない外国人の方は配偶者ビザに変更ができません。現在お持ちの在留資格のまま日本に滞在します。

外国から同性の配偶者を呼ぶ場合、日本のように母国が婚姻の証明書類を発行しないと配偶者ビザで来日できません。「技術・人文知識・国際業務」などほかの在留資格が取得できないか検討をします。

フランスなど同性カップルの婚姻を認めている国でしたら婚姻を証明する書類があります。残念ながら配偶者ビザではありませんが、「特定活動」で配偶者と一緒に日本で住むことができます。

結婚という契約

結婚とはそもそも何かを考えます。日本の結婚は憲法、また民法で規定されています。

例えば
婚姻適齢が書かれた
民法第731条 男は、十八歳に、女は、十六歳にならなければ、婚姻をすることができない。
重婚禁止の
民法第732条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
数年前に憲法違反となった再婚禁止期間は民法第733条に書かれています。

上記の法律は結婚前に関することが規定されていますが、民法には結婚後の夫婦のあり方も規定されています。

同居、協力及び扶助の義務
民法第751条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

同居の事実のない配偶者ビザの申請は不許可になる可能性が高いのはこの民法によります。日本では夫婦は同居しているものだと考えられています。

また夫婦の財産についても民法で規定されています。

夫婦の財産関係
民法第755条 夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。

夫婦ふたりの財産は夫婦ふたりのもの、といった一般的なルールです。

A3で1枚の婚姻届ですが、婚姻届を提出することで私たちはたくさんの契約をしていることがわかります。
婚姻届を提出したら不倫はできません。
夫婦なら特別な事情がない限り同居をしなければいけません。
結婚後の財産は夫婦ふたりのものです。
婚姻届1枚の裏には、私たちが見ていない契約がたくさん書かれています。

同性婚の前にカップルがすること

同性婚を考えているカップルは、婚姻届を提出することができません。それは婚姻届に付随するすべての契約ができないことを意味します。
冒頭で紹介したピーコさんの言葉は、婚姻届に付随する遺産の契約が同性カップルではできないということです。配偶者であるはずなのに配偶者ではないため、被遺言者として遺産を受け取ることができません。

しかし遺産ですので、遺言書を残せば愛する人に財産を残すことができます。法律で遺留分が認められているためすべての財産を同性カップルに残すことはできませんが、これは異性カップルでも同じです。遺言という契約がおふたりを守ります。

結婚も契約だと考えると味気ないかもしれませんが、婚前契約を交わすことで婚姻届と同じ契約をカップルと交わすことができます。
浮気の罰則・財産の管理・カップル解消後の財産分与、必要な項目はカップルによって違うと思います。お互いに話し合い決めてください。
最近は異性婚でも婚前契約を交わすカップルが増えています。家事の分担、誕生日のお祝い方法まで契約は多岐にわたります。

遺言書も契約も公正証書にすることをおすすめします。特に遺言書を自筆で作成すると偽造を疑われ”争続”になるケースがあります。大切な人のためにお金を惜しまないでください。

異性婚と比べるとコストもかかりってしまうのが実情です。しかし、おふたりにとって何が最善なのかを考えていただければ幸いです。