とあるネットの記事に結婚式場にあるチャペルで結婚式をするときに参加している神父(牧師)は”ニセモノ”だ、と書かれていました。あの神父や牧師は日本でモデルをしているタレントだったり語学教師だというのです。

教会ではなく結婚式場の横にあるチャペルですから、確かに普段から”ホンモノ”の神父や牧師がいるとは考えられません。それでもどこかの教会から派遣されてきた”ホンモノ”だと思っていましたので、これには驚いてしまいました。

普段はモデルをしていたり、英語を教えている外国人を前に宣誓をしても…

しかし結婚式の神父や牧師をすることはアルバイトとして認められるのでしょうか?
在留資格から結婚式の神父や牧師について見ていきます。

※結婚式場によってはホンモノの神父や牧師を派遣してくれるところもあるようです。結婚式場にご確認ください。

在留資格は何ですか?

在留資格とは読んで字のごとく、日本に在留するための資格です。

日本でどのような活動をするのか、その活動をするための条件をクリアしているのか、出入国在留管理局(入管)で審査されます。日本に滞在する外国人が必ず許可を取らなければいけない資格です。在留資格がない外国人は不法滞在で捕まってしまいます。

たとえば、日本でモデルをしたい外国人は在留資格「興行」の許可を取らなければいけません。
語学教師をしたい場合は、語学教室なら「技術・人文知識・国際業務」を、小・中・高の学校で教えるときは「教育」の在留資格が必要です。

このように、在留資格は許可を取った在留資格で認められた活動しかできません。同じ語学教師でも教える場所によって在留資格は違います。

あれ? だったらモデルや語学教師の外国人が結婚式の神父や牧師をしても大丈夫なの?

と疑問に思われた方、そのとおりです。

「興行」や「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格を持つ外国人は神父や牧師などの活動はできません。これは在留資格「宗教」で認められた活動です。在留資格で認められていない活動=資格の外の活動をすると資格外活動違反で捕まってしまいます。

資格外の活動をするとき

資格外活動

在留資格の資格外の活動ができない外国人ですが、これでは日本でスムーズに生活できませんし、日本のためにもなりません。

語学教室で働いている外国人が週に3回ほど小学校で英語を教えてほしいと依頼があったとき、わざわざ在留資格を変更しないといけません。しかし在留資格を変更すると語学教室で教えることができなくなってしまいます。

これではせっかくの能力を活かすことができません。そのため資格外の活動をするときは「資格外活動許可」を取ることでほかの在留活動で認められている活動ができるようになります。

資格外活動許可の条件

(1) 申請人が申請に係る活動に従事することにより現に有する在留資格に係る活動の遂行が妨げられるものでないこと。
(2) 現に有する在留資格に係る活動を行っていること。
(3) 申請に係る活動が法別表第一の一の表又は二の表の在留資格の下欄に掲げる活動(「特定技能」及び「技能実習」を除く。)に該当すること。(注)下記2(1)の包括許可については当該要件は求められません。
(4) 申請に係る活動が次のいずれの活動にも当たらないこと。
 ア 法令(刑事・民事を問わない)に違反すると認められる活動
 イ 風俗営業若しくは店舗型性風俗特殊営業が営まれている営業所において行う活動又は無店舗型性風俗特殊営業,映像送信型性風俗特殊営業,店舗型電話異性紹介営業若しくは無店舗型電話異性紹介事業に従事して行う活動
(5) 収容令書の発付又は意見聴取通知書の送達若しくは通知を受けていないこと。
(6) 素行が不良ではないこと。
(7) 本邦の公私の機関との契約に基づく在留資格に該当する活動を行っている者については,当該機関が資格外活動を行うことについて同意していること。

法務省HPより

資格外活動はあくまでサブの活動でメインの活動にすることはできません。そのためメインの在留資格の活動を行っていてその邪魔にならない範囲で行います。

また制限なく活動ができるわけではありません。外国人が日本で行うことができる活動=在留資格で認められている活動しかできません。

結婚式の神父や牧師は在留資格「宗教」で認められている活動です。「宗教」以外の在留資格を持つ外国人は「資格外活動許可」を取ることで結婚式の神父や牧師の活動ができるようになります。

結局ニセモノなの?

資格外活動許可ですが、無条件に許可は取れません。在留資格はクリアしなければいけない条件があります。それは資格外活動許可申請をしてアルバイトをするときでも同じです。

結婚式の神父や牧師の資格外活動をする場合、宗教団体に所属していなくても大丈夫ですが、結婚式の司式を取り扱う宗教上の資格が必要です。この資格がなければ資格外活動は認められません。

チャペルで神父や牧師をされている外国人は、結婚式の司式を取り扱う宗教上の資格を持っているはずです。これを持っていないということは資格外活動違反ですので違った意味で資格がありません。

宗教上の資格を持っているのでしたら、”ニセモノ”とはいえないのではないでしょうか?

もちろん、日曜日は礼拝をされ宗教者として生活をされている、在留資格「宗教」の許可を取っている外国人とは違いますが、単純に”ニセモノ”とはいえません。結婚式の司式を取り扱う資格を持つ神父・牧師だと考えられます。

当事務所にできること

在留資格から結婚式の神父や牧師について見てきました。チャペルで結婚式をされる方は、一度ブライダルプランナーに「神父(牧師)の方はホンモノですか? それとも資格外活動許可を取っていますか?」と聞いてみてはいかがでしょうか?

もし資格外活動許可を取っていない場合は、その神父は”ニセモノ”です。”ニセモノ”を働かしているとその結婚式場は不法就労罪で捕まる可能性があります。

結婚式場としては、不法就労にならないように、結婚式を挙げられるカップルの方に”ホンモノ”の神父や牧師をご紹介できるように在留資格、資格外活動にご注意ください。

※ただし、日本人の配偶者や永住者、帰化した方は就労の制限がなく日本で自由に働くことができますので”ニセモノ”の神父や牧師が働いていても…。

JOY行政書士事務所では資格外活動許可申請も承っています。ぜひお問い合わせください。