前回の記事では外国人留学生の就職先として注意しなければいけない「学習内容と業務内容の関連性」の説明をしました。専門学校・大学で勉強した「専門性」をいかせる仕事でないと「技術・人文知識・国際業務」の在留資格(就労ビザ)が取れません。
今回は私が経験した日本語やビジネスを学ぶ外国人留学生の国別の就職先を例示します。

ベトナム人留学生の就職先

ベトナム人留学生の多くは工場に就職していました。もちろん工場で単純作業を行うわけではありません。専門性のある仕事=「技術・人文知識・国際業務」は単純作業を認めていません。
ベトナム人留学生は「技能実習生」の通訳・管理業務を行うため工場に就職するのが特徴です。

日本語通訳・ビジネスを勉強してきた「専門性」をいかせる仕事として、ベトナム人留学生がベトナム人技能実習生の通訳・人材管理はベストな選択です。

またベトナム人留学生の場合、母国の専門学校・大学を卒業しているケースがあります。学習内容と業務内容の関連性は母国の学歴も考慮されますので、企業は履歴書や面接で母国の学歴の詳細を聞き取ってください。外国人留学生では珍しい理系の学校を卒業している留学生もいます。
理系の学校を卒業している場合、「技術・人文知識・国際業務」の「技術」を前面に押し出せるかもしれません。また工程などのマニュアルの翻訳・通訳の「専門性」の説得力が増すかもしれません。

ネパール人留学生の就職先

ネパール人留学生はホテルに多く就職していました。ネパールではホテルで働くことがステータスになっているようです。またネパールではエベレスト登山などの観光業が発達しているため、将来は帰国し、母国でホテル経営を夢見ている留学生が多くいるのが特徴です。

ホテルのフロント業務でしたら学校で勉強をした日本語通訳・ビジネスをいかせる「専門性」があると考えられます。

しかしホテルに就職するネパール人留学生がもっともハマる落とし穴は「英語能力の証明」です。

業務の該当性・安定性・継続性

コンビニ、飲食店の店員が外国人(ほぼベトナムやネパールの留学生)だけになりました。外国人を見ない日はありませんが、私は日本に観光に来るベトナム人やネパール人を見たことがありません。

「ネパール人って、日本に観光で来ていますか?」
出入国管理局も同じように考えています。

「外国人留学生の行う業務が在留資格に該当しているか」

「学習内容と業務内容の関連性」と合わせて出入国管理局が在留資格の許可を出す大切な判断材料です。

たとえば、「介護」の仕事を行う外国人留学生が「技術・人文知識・国際業務」で申請をした場合、在留資格の該当性がないため不許可になります。逆に「技術・人文知識・国際業務」に該当する仕事を行う外国人留学生が「介護」で申請をした場合も不許可になります。
※「介護」の勉強をしていない外国人留学生が「介護」で在留資格を申請した場合は「学習内容と業務内容の関連性」がないため不許可になります。外国人留学生の就労ビザが不許可になるケースは上記の2つの理由のどちらか、または両方の理由で不許可になります。

この在留資格の該当性ですが、出入国管理局は該当性のほかに安定性と継続性も厳しくチェックします。
外国人留学生が行う業務は1日どれぐらいの割合あるのか、長期的に見て必要な業務なのか判断されます。

外国人留学生の英語能力

話をネパール人とホテルに戻します。日本に観光に来るネパール人が少ない場合、また就職先のホテルに宿泊するネパール人が少ない場合、
出入国在留管理局は「ネパール人の宿泊客が少ないなら翻訳・通訳をする仕事は少ないよね」と考え、在留資格の該当性・安定性・継続性がないと判断します。
そのため出入国在留管理局は、ネパール人よりも圧倒的に数の多い欧米人の宿泊客の対応ができないか判断をするため、外国人留学生の英語能力の証明を求めてくるのです。
ネパール人留学生の英語能力が高ければフロント業務を安定的・継続的にできる人材だと判断され許可が取れます。

ネパール人留学生の英語能力の証明はホテルに限らず、携帯販売などの翻訳・通訳を必要とする接客業ではほぼ必要です。ベトナム人留学生と比べて技能実習生の数が少ない、ネパール語を使った仕事が少ないネパール人留学生の”弱点”と言えるかもしれません。

しかし、新しい在留資格「特定技能」ができました。ベトナム人技能実習生のように「特定技能」で働くネパール人が増えれば、ネパール語を使った翻訳・通訳の仕事で「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の許可が取れるかもしれません。

そのほかの国々の就職先

外国人留学生はほかにミャンマー・スリランカ・バングラディッシュなどから来日しています。中国人の数が減り、西へ西へと留学生が移っているのが現状です。

ミャンマーは技能実習生もいますし、日本企業の工場もあります。ベトナム人留学生と同じような就職先が考えられます。
スリランカやバングラディッシュ、ほかの少数の留学生の就職先ですが、ネパール人と同じような状況になると思われます。

必要なのは英語能力の証明です。
企業の方は留学生の人柄を見込んで内定を出しても、出入国在留管理局は留学生本人と面談を行うわけではありません。
企業の方は内定後、外国人留学生に何度もTOEICを受験させてください。特にネパール人留学生の英語は独特で、英語が話せるネパール人もTOEICの点数が低くなる傾向があります。

まとめ

簡単ながら外国人留学生の就職先を国別にまとめました。何度も申し上げますが、出入国在留管理局は留学生を個別に審査しているため在留資格の申請には留学生の経歴・業務内容など詳細のヒアリングが必要となります。
ひとりひとりに適した手続きがありますので、ぜひ専門学校の進路担当だったJOY行政書士事務所にご依頼ください。

就職活動が本格的に始動する時期だと思います。企業の方は外国人留学生の就職に内定を出す前の事前相談をご依頼ください。

留学生の英語能力の証明ですが、TOEICだけではありません。CASECなどのネット検定も有効な手段です。留学生の経歴を掘り下げ、出入国在留管理局に理由書を送り許可が取れた留学生もいます。3月、4月ごろに在留資格変更申請をした留学生の結果が出るころだと思われます。
JOY行政書士事務所では不許可理由の検討なども承っています。